ちょっぴり解説

人物

ミシャ:弓を使う金髪の狩人。
マスター:ギルドの統括者 ( とうかつしゃ ) 。茶色い長髪の男魔術師。
クロマティガード:警察と同義。

その他

ギルドホール:本編の面子が出費して作ったばかりの、ギルド単位の専用拠点。
ビガプール:貧富の差が激しい巨大な街。でもあまり用がない。
リーチ:巨大なイモムシ型モンスター。なぜか飴や菓子をドロップする。
ガーゴイル:獣を懐柔するテイマーのハティが飼っている、小型の竜。本当は乗れない
フルヒールポーション:体力を最大値まで回復させる道具。具体的な使用法は不明。

愛すべきもの<from:MMO-RedStone>

「おつかれさん」
コツンと、長髪の男が
イスに腰掛けている女の頭に、瓶を当てて差し出す。
「・・・なんですかマスター、これ」
瓶を受け取って、座っていた女は
それを注意深く観察をした。
瞳は陽光の色を宿しているものの、今は少しばかり曇りがある。

「またゲテモノじゃないですよねぇ?」
笑顔で向かいの席に腰掛けた魔術師に向けて
狩人ならではの、刺すような視線が送られた。
なにせ、このマスター、味覚が・・・あー、”個性的”なのだ。

「あのねぇ」
その様子に、やれやれと言った様子で魔術師はため息をついた。
「ギルドホール作成で、皆が疲れてると思って
 栄養のつくものを、こうやって配ってるだけだよ」
「・・・じゃあ、”試験品”ではないんですね?」
すかさず、金髪の女が切り返した。

「大丈夫。誰からも文句出てないし、僕も飲んだんだから」
茶髪の男が、うなずきまくって請合う。
この男が飲める、イコール安全。
・・・そんな方程式が成立し得ないことは、重々承知している。

「コレ、原料は何ですか?」
もっとも、クレームが出てない以上、安全なのだろうけれど。
瓶のコルクを抜きながら、女は尋ねた。
天井を仰ぐ男を横目で捉えつつ、女は瓶の中身をグラスにあけた。

「一週間前の試合で使いそびれた
 フルヒールポーションを薄めて・・・・・」
ぶーっ。
机に向かって、液体が盛大に吹き出された。

「それ消毒薬じゃないんですか!?
 飲み物じゃないでしょ!」
女と同じくらい、男も驚いていた。
「え、”どっちでも大丈夫”って店員さんが言ってましたよ?」
「それ以前に、一週間前って時点で―――」

言いかけて、やめた。
無駄だ、と悟ったのだ。
頭を抱えてうつむく女の視界に、
心配そうな表情をした男が、顔をのぞかせた。
「リーチの原液も混ぜてありますから、大丈夫ですよ」

リーチ・・・? あの超巨大イモムシの?
―――何がどう大丈夫なんだろう。
誰だ、こんな悪食をギルドのマスターに推したやつは。

あれこれ考えていると
ギルドホールに、メンバーが戻ってきた。
数名、酔い潰れたかのようにグッタリしているのは、気にしないコトにする。

「あ、2人ともボーッとしてないで手伝って下さいよ」
病人をペットに担がせているテイマーが、助けを求めた。
そのテイマーの後ろには、シーフとウルフマンが居て
同じように、背中に人を担いでいる。

―――死人にクチナシ、か・・・
頭の片隅で彼女は、そんなどうでも良いコトを考えた。

「参ったわねぇ。これから昼の買出しなのに」
病人を寝かせた後、フロアを見渡すと
生き残っていたのは、わずか6名だった。

「どうします、ミシャさん?」
テイマーが、女狩人を見上げていた。
どうするも、こうするも無い。

「ヤクーは、マスターと病人の世話でもしてなさい。
 そんな目してもダメ。店員さんが怯えるから、あんたは留守番」
それを聞くなりウルフマンは、
部屋の隅で、木の壁を人差し指で引っかき始めた。

残りの5人で、食事やら消耗品やらの
買出しをする為、やってきたのはビガプール。
天使のグラフが、得意の転送魔法で片っ端からホールに荷を運んでくれるから
思いの外、荷物は、かさばることが無かった。

と、いうわけで、ここに暇人が居た。
病人を運び込んだ、シーフとテイマーだ。
「おまえ、先に行ってろ」
普段、滅多に喋らないシーフが喋ると、少々の驚きがあるのは無理も無い。
そもそも、この男が何かに興味を持つこと自体が珍しい。
テイマーは、反射的に言葉を返した。
「何を見てるんですか?」

なんとなく、彼の視線を追った先には
公園を駆け回る、1人の少女が居た。
・・・というか、子どもが居た。

「抱き心地、良いだろうな・・・」
思わず、間の抜けた声が女の口を突いたが
幸い、彼の耳がその言葉を拾うことは無かった。
「わ、私、先に行ってますね」

「・・・ハティ、1人か?」
テイマーが、息をはひはひ肩でつきながら
天使の元へとやってきた。
「ぐ、グラフさんに、お聞きしたいことがあるんですけど!」
深呼吸を三つ、ハティは間に挟んだ。

「風哉さんって、”小さいの”が好きなんですか?」
グラフが、あのシーフの一番の話し相手だとハティは知っていた。
必死な様子の女を、きょとん、と眺めた後にグラフは
「ああ、アイツは”そういったモノ”に目が無いな、あんなナリで」
答えた。
いともアッサリと。

しばらく下を見ていたかと思うと、少女は突如顔を跳ね上げた。
「ありがとうございます、グラフさん。
 私、頑張ります !!」
その目には、強い決意の光が宿っている。
―――何を頑張るんだろう。
   何か、誤解させたかもしれない。
そんなグラフの思いが、言葉になるより早く。

「おいで『グラフ』!!」
少女のもとにやって来た大きな『ガーゴイル』が、彼女を背に乗せ飛び立っていった。
―――自分の名前を、ペットにつけてくれるなんて。
ちょっと目頭を熱くさせた天使は、知らない。
ただ単に『乗り物繋がり』で命名した、彼女の思考回路を。

ホールで留守番をしているヤクーは、不満だった。
今日は、一月に一度の宮廷料理の一般開放日。
アレコレ楽しみにしているものが、あったのに。

―――留守番をすっぽかして、外に出ようか。
そんな気持ちになって来た時だ、人がやって来たのは。
「ヤクー、昼飯買って来たぞ」
やってきたのは。
有り得ないほど明るい笑顔の、シーフだった。
普段が普段なだけに、笑顔が怖い。

風哉は、座れ座れ、とヤクーの浮いた腰を抑える。
「今日はだな・・・トクベツに
 バリアート特産、火トカゲ―――」
ぴくっと犬耳が反応した。
火トカゲの肉を使った、香草の蒸し焼きに違いない。
無論、本日の昼食メニューの予定に、組み込まれた料理だった。

「―――を、ナマで持ってきた」
ぺろん。
肉切れが三枚、取り出された。
―――なぜ、ナマ?
さきほどから、風哉のニヤケが止まらない。
何か関係があるとでも?

「ちょっと、横になってくれよ」
恐る恐る、体を横倒しにしてみる。
何かを考え込むように、男は頭をひねった。
「もっとこう、ほふく前進みたいな・・・そうそう!」

「・・・何がしたい?」
問われてシーフは口篭もる。
なにやら、頭の中で葛藤をしてるらしい。
言うべきかどうか迷ってるようだったが、彼は口を開いた。

「お、俺さ・・・夢があるんだよ」
なんとなく嫌な予感がして、ヤクーはジリジリと後退する。
「わ、笑うなよ・・・」
返事の代わりに、もう少し、男と距離をとった。
次の瞬間、ヤクーの目が点になった。
「俺、動物を飼ってみたかったんだよ」

なるほど、旅の間に動物など飼えるはずが無い。
「さっき、公園で駆け回ってる仔犬を見てさ。
 やっぱり、どーしても・・・・・・」
期待に満ちた視線が、彼の瞳から放たれた。
「断る」
彼の願いは、当然ながら無愛想にヤクーが一蹴した。

「ど−しても、一回、ぎゅー・・・っとだな・・・」
「他を当たれ」


※上の画像はイメージです。
商品の内容を保障するものではありません
「な、こんな感じで良いから。
 10秒、いや1時間で良いから!」
「・・・・延びてるぞ」

その頃、ビガプールでは・・・。
「あ、あっちです、あっち!」
騒然とする町の中、住民に案内されるクロマティガード。

「ご、誤解ですよ、誘拐だ何てそんな!」
1人のテイマーが、幼女誘拐の容疑で尋問されていたそうである。

1年〜2年前に書いた代物を加筆修正/2009-7-4